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大池恭平さん Kyohei Oike

  • 執筆者の写真: ロボコン事務局 ROBOCON Secretariat
    ロボコン事務局 ROBOCON Secretariat
  • 7月9日
  • 読了時間: 6分

〈プロフィール〉

Dチームリーダー。長野高専出身。2007~2011年の5年間、NHK高専ロボコンに毎年出場。

現在は、大手電機メーカーの新規事業開発を行う部門に所属し、様々なテクノロジーを活用して、顧客の課題に応えるシステムの開発などを手がけている。

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心の奥で、“ものづくり”の欲望がくすぶり続けていました

―――大池さんは、高専ロボコンと魔改造の夜の両方に出場されています。

ものづくりが本当にお好きなんですね。

はい。大好きです。小学生の頃からロボットをはじめ、色んなものを手作りするのが大好きでした。

学生時代は高専ロボコンに明け暮れて心が満たされていましたが、高専を卒業して15年。社会人になるとなかなか時間的にも厳しいですよね。やはり、ものづくりの機会は減りました。社会人だから仕方ないと頭ではわかっていたつもりでしたが、きっと心のどこかで欲求がくすぶり続けていたんでしょうね。

魔改造の夜に出たこともありますが、私を形作ったのはロボコンですので、XROBOCONというものを新しく立ち上げるって聞いた時には、情熱が一気によみがえってきて、素直に「ああ、またみんなで何かモノを作りたい」と思えたんです。

 

―――情熱がある大池さんだから、リーダーには立候補されたんですか?

いえいえ、私は立候補などしていないです。グループでの会議など気づけば全体の進行を担うようになっていたので、そのままの流れでチームのマネジメント部分を担当しているだけです。強いて言えばDチームは全員がオーナーシップを持って進めていますので全員がリーダーではあります。そもそも自分は、特にXROBOCONのリーダーには不向きだと思ってまして。

 

―――XROBOCONのリーダーに不向きとはどういうことですか?

そもそも僕は“勝つためのロボット”しか作れないからです。話は学生時代に遡りますが、高専ロボコンに3年生で初めてリーダーとして出場した年、地区大会の1回戦でロボットが故障しちゃったんです。スタートゾーンから出られなくて、結局、何ひとつ動かないまま試合が終わってしまったんです。めちゃくちゃ恥ずかしくて悔しくて、今でもトラウマです(笑)。だから翌年以降は品質に着目して必死で壊れずに競技をこなせるロボットを作りました。そしたら地区大会で優勝できたんです。すると人間、次々と欲が出るもので、次は高専5年生のロボコン最後の年に全国大会で勝ちたいと思うようになりました。ロボコン経験者なら分かると思うのですが、勝つためにはデザインも余分な機能も躊躇なく削ぎ落してリスクを減らす。気づけば、私が作るロボットは「勝つため」に特化したものになっていったんですよね。

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高専ロボコン時代 
高専ロボコン時代 

 

―――勝つためのロボットもアリだと思いますが

もちろん、勝つためのロボットは決して悪くない。ただそれだけだと、多種多様なバックグラウンドを持つメンバーと協力して20年後のテクノロジーを生み出すXROBOCONのコンセプトにはそぐわないんです。

勝つためだけのロボットを作っていては、エンターテイメントやゲーム性は入れ込めない。僕が最初からリーダーになってしまうと勝つためだけのロボット作りになってしまうので、“チームとして何を達成したいか“から考えたいなと思っていました。

 

―――そんな大池さんがリーダーを引き受けたいきさつは?

チームメンバーがどのようなことを思っているか分析するために最初のころはあまり喋らないようにしていました。でも、全国から初対面の人が集まったチームですから、当然、話は盛り上がらないわけです。どんなロボットを作りたいかを議論する以前に、話をしないことにはみんながどんな人でどんな事を考えているのかすら分からない。このままではさすがにマズイと思い、僕が顔合わせと方針決めの会議を仕切ってしまったんです。

 

「イベントが終わったとき、何て言いたい?」

―――大池さんはチームの会議をどう仕切ったんですか?

会議で用いたのは“インセプションデッキ”というアジャイル開発で有名な手法なのですが、チームとしての方向性を決めるのに役立ちます。言葉では説明しづらいので、議事録を一部お見せしますね。僕が質問を出し、それに対してメンバー全員で意見を出していきます。それをオンラインホワイトボードにどんどん貼っていきます。

例えば、「イベントが終わったとき、何て言いたい?」という質問に対しては、「楽しかった」と言いたい、「ここ俺が作った」と言いたい、など色んな答えが出ました。これを分類してチームの考えをまとめていきます。こうすることで、各メンバーの目標や、やりたい事が可視化されていきますよね。

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こちらは「どんな賞を目指す?」という質問です。自分が欲しいと思う賞に投票してもらいました。

“優勝” “ベストUIデザイン賞” “賞は要らないけど他の成果としてほしいものがある”と答えた人までいるくらい、チームの中で非常に意見が分かれました。“一番目立ったで賞”を獲りたいと付箋を追加したメンバーも(笑)。

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オンライン会議でこんなQ&Aを繰り返しているうちに、みんなどんどん発言するようになっていきました。議論の結果、僕たちのDチームが目指すのは「万博にフラッと遊びに来た人に、楽しんで帰ってもらいたい」ということに行きつきました。つまり、僕たちはロボットを作るだけでなく、その先にある観客の体験を作らなきゃいけないという事なんです。そのために優勝を目指すのか、はたまた別の賞を目指すのかは当日までのお楽しみです。

 

 

―――“観客の体験を作る”は素敵です。でも難しいテーマに挑戦することになりましたね。

勝つためのロボットという手段しか作ってこなかった僕からすると、未知の挑戦ですよ(笑)。

チームでも難しいけど挑戦してみよう!とみんな動き出しています。

XROBOCONはAI、デザイン、電子回路、制御、機械など異なる分野の人が集まっているので、それぞれ考え方も違うのですが、みんな同じ方向を向いているので少々の困難は乗り越えていけると思っています。

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―――自分の考えを押し付けずにメンバーの個性を引き出す大池さんは、リーダーに向いていると思いますが…

いまだにちゃんとやれているか自信はないですが、チームとして動くためにメンバーの意見を引き出すことを心がけました。今回のチームビルディングは自分の中ではとても良い経験になっています。実は、このインセプションデッキという手法、業務を進める上での知識として勉強はしていたものの実際に自分自身で使ったことはなく、まさかXROBOCONで役立つとは思いませんでした(笑)。


 

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―――目指すリーダー像はありますか?

自分のやりたいことを実現するためのメンバーを集めて、強烈に旗を振って「みんなついて来い!」というやり方もありますが、今回は多種多様で“初めまして”のメンバーが集まっています。リーダー像というわけはないですが色んな人に“気づき”を与えられるチームメンバーの一人になりたいと思うようになりました。メンバーそれぞれがオーナーシップと個々の力を発揮できるようにするための“気づき”を与える。それが今の僕の役割かなと思っています。

 

 
 
 

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