今野麟太郎さん Rintaro Konno
- ロボコン事務局 ROBOCON Secretariat
- 3 日前
- 読了時間: 7分
〈プロフィール〉
Cチーム ロボット2製作班 リーダー・設計担当
メーカーに勤務する社会人1年目。現在は研修中だが、今後は開発職として活躍が期待されている。
旭川高専卒業、豊橋科学技術大学大学院修了。学生時代には高専ロボコン・学生ロボコン・ABUロボコンで活躍した。
・2018、2019年 NHK高専ロボコン全国大会出場
・2022年 NHK学生ロボコン優勝、ABUロボコン技術賞

ロボコン卒業…するはずだったのに
――――XROBOCONに参加したきっかけを教えてください。
僕は学生の頃は、高専ロボコンと学生ロボコンの両方に出場しているので、かなりロボットは作ってきたつもりです。なので、ロボコンは学生時代できっぱりやめるつもりだったんですね。でも、ちょうど社会人になるというタイミングでXROBOCONの話を聞いてしまって。もし面白そうだったらやってみようかな、ちょっと説明会聞いてみようかなと足を踏み入れたら、結果ズルズルと(笑)。流れに身を任せたらこうなりました。
――――そもそも、どうしてロボコンを続けてきたんですか?
僕の場合はロボットが好きっていうより、どちらかというと昔からロボコンが好きだったんですよね。ロボコンを勝負事として捉えてみると、自分で操ることができる部分が大きいじゃないですか。例えば一般のスポーツだと自分の体を使うので、どうしても制限が生まれちゃう。でも、ロボコンは多少の設備の差はあったとしても、発想は自由なので。それに高専ロボコンや学生ロボコンは毎年ルールが変わるので、過去の反省を生かしつつも毎年リセットされた状態で臨める、全員がフェアな状態で戦えるのがいいんですよね。


――――社会人1年目ということですが、慣れない仕事とロボコンの両立は大変じゃないですか?
そうなんです。入社前にXROBOCONに出ると決めたので、ある意味、社会人の忙しさを知らない状態のときだったんですよ。いま思えば冒険的なことはしたのかなとは思ってますね。でも、今はまだ研修中でまだ本配属が決まっていない段階で、逆に言うと残業がないのでXROBOCONの時間もうまく取れてます。まさにワークライフバランスっていうんですかね(笑)
ロボット飛びます、ガチで。
――――今野さんはチーム内ではどんなことを担当しているんですか?
うちのチームの特徴として、全く異なるロボットを2台作ってるんですよ。僕はそのうちの1つのロボットを作る班のリーダーと設計を担当しています。5人体制で、高専ロボコンや学生ロボコンの経験者たちで構成されています。
――――どんなロボットを作っていますか?
ジャンプするロボットを開発しています。2個のタイヤで普通に走行もしますし、そのままジャンプもします。中国のロボコンを見ていて、そこからヒントを得たんですけど。ちょっと前の練習会では、フィールドと同じ高さの段差をちゃんとジャンプでのぼれたんですよ!今回のフィールドには高さの異なる3種類の土俵がありますけど、何段目を飛べたかはナイショです。でも、ほんとに意味わかんないくらい飛びますんで(笑)。万博会場ではダイナミックなパフォーマンスをお見せできるように、まだまだブラッシュアップを続けます。
――――なぜジャンプにこだわったんですか?
まずはスピード重視です。ハシゴを登るみたいな仕組みもありますけど、足を段差の上に上げて、足を伸ばして、その後に縮めて…と工程が多くなるので、どうしても遅くなると思うんですよ。で、ジャンプしかないよね、という話になって。
もう1つは、XROBOCONという新しいロボコンの最初の大会なので、やっぱり盛り上げなきゃいけない。“勝ち”だけでなく観客を“魅せる”ことも選手に求められていることじゃないかと思ったんです。ですので、技術的に難しいことにもチャレンジしなきゃっていう思いもありますね。これまで高専ロボコンや学生ロボコンでたくさんロボットを作ってきましたが、今回が一番ヒヤヒヤするロボットであることは間違いないですが、あえて挑戦しています。
ロボットがダイナミックな動きをするとお客さんも応援してくれると思いますし。もし失敗したとしても、ジャンプするっていう情報があるだけで、そのロボットに期待感が生まれると思うんです。ジャンプする前の予備動作に入るあたりから、観客の心を掴みたいなと。会場に一体感を生み出したいんですよね。

――――ジャンプを実現させるためのロボットの工夫はありますか?
ジャンプさせるためには、動力つまりモーターの力もかなり必要になってきますし、飛んだ後にきれいに着地させなきゃいけない。当然、いろんな所に衝撃が走るので、それを回避させたり、壊れない構造にしなきゃいけないのが機械的に大変な部分です。
だから逆の発想で、もう壊れるということ自体を受け入れて、あえて壊れやすいパーツを1つ作っておくんです。そうすると衝撃が与えられたときには、そのパーツが壊れてくれる。そしたら、そのパーツを簡単に交換できる仕組みにしておけばいいわけです。いわゆるメンテナンス性を上げるという作戦です。
これはもう、“大人の真剣な遊び場”ですね
――――XROBOCONをやってみての率直な感想をお願いします。
僕の感覚としては、すごく遅いペースでロボットを作っている感じがしています。学生時代と違って、毎日全員が顔を合わせてロボットを作れるわけではないし、今回のXROBOCONは色んな分野の人が集まっているので、チーム内の合意形成も時間がかかったりします。学生時代と比べるとロボット製作のペースは4分の1程度かな。でも、そのぶん経験値のあるメンバーが集まっているので、学生時代には試行錯誤をしていたことも一発で成功することが多いので、意外にちゃんと進んでいます。そう考えると、大変なことより楽しいことの方が多いです。
――――具体的にはどんなことですか?
僕はずっと機械を専門にやってきましたが、チームには、AI班やバーチャル班の人たちもいます。今まであまり会ったことも話したこともなかった分野の人たちと一緒にものづくりができるのは、すごく楽しいですし、新しい視点をもらえますよね。高専ロボコンや学生ロボコンでも、実は1年生が出したアイデアがすごく面白いことがよくあるんです。上級生になると凝り固まって突飛な考え方ができなくなってるんですよね。XROBOCONもそれに似た部分があるなと。例えば、AIに関しては、僕は使う側つまりユーザー目線でしか見られないけど、AI専門の人たちは、作る側の視点で物事を考えている。その違いだけでも面白いです。色んな分野の人たちが集まると、アイデアにも色んな方向性が生まれるので、すごく刺激的です。
――――XROBOCONの魅力をひとことで表すと?
“大人の真剣な遊び場”ですね。滅茶苦茶ちゃんとした遊び場ですよ。社会人になったからこそ余計に感じるんですが、フィールドはもちろん、一緒にものづくりができるメンバーが居るってすごくありがたいことなんです。社会人から学生まで幅広い人が居るっていうのも楽しい。
XROBOCONは、僕も学生時代とは違ったマインドで取り組めています。学生時代は勝つためのロボットしか作ってこなかったので、正直、観客を楽しませようなんて1ミリも考えたことありませんでした。でも今回は、チームメンバーも観客も含めてみんなで楽しみたい、万博会場を沸かせたいというマインドの方が強くなりました。

ロボコンのスポンサーになりたい
――――今野さんは社会人になったばかりですが、何か目標はありますか?
僕、ロボコンのスポンサーになりたいんですよね。いま自分が所属している会社でもいいですし、自分で会社を興すでもいいんですけど、とにかくロボコンで選手に賞をあげる人になってみたいんです。
――――えー、またどうしてですか?
ちょっと憧れがありまして。ロボコンに何度も出ていると、それなりに賞をいただくんですけど、表彰式に出てくるスポンサーの人って、熱心に学生に目を向けてくれるし、めちゃくちゃ握手も強いんですよ。
学生にとってみれば、スポンサーの特別賞って優勝を逃した時にもらえる賞という印象ではあるんですけど。そこでちゃんと自分たちが作ったものを肯定してくれて、固い握手をしてくれる。僕は高専時代の地方大会の時、スポンサーの人の握手に救われたんです。ちゃんと見てくれる人がいると、次また頑張れるんですよね。

――――そんな経験があったんですね。必ず実現させてくださいね(笑)!
はい、将来はロボコンでスポンサー席に座ります(笑)。
でも、本当にあの時、自分の行動に自信を持っているというか、大人としてかっこいいなと思ったんですよね。後輩たちにちゃんと真剣な眼差しを向けて、固い握手ができる大人になりたいです。
Comments