荒木宏哉さん Koya Araki
- ロボコン事務局 ROBOCON Secretariat
- 7月1日
- 読了時間: 6分
〈プロフィール〉
Cチーム リーダー
島根大学 総合理工学部 知能情報デザイン学科 4年
LLMを使って古いゲームを再現する研究に携わっている。
旭川高専出身。

きっかけは恩師のひとことだった
――――XROBOCONに参加した理由を教えてください
ちょっと言いづらいんですが…たまたまだったんですよね。
僕は旭川高専出身なんですが、今年2月に高専時代の恩師の研究室に遊びに行ったんです。その時に、ちょうど携帯が鳴ったんですよ。SlackでXROBOCONのお知らせが来ていたんですよね。
それで、雑談で「こんなロボコンあるらしいですよ~」って言ったら、先生が「出てみなよ」って。
「え~!?無理でしょ」って思いましたけど、恩師は本気でして。先生が言うなら、じゃあやってみようかなって。そこから先生が他の教え子たちと繋いでくれたこともあり、一気に人が集まったんです。JAIST(北陸先端科学技術大学院大学)の博士課程の後期課程にいる先輩とか、高専ロボコンでバリバリやってた優秀な先輩とか。
恩師の研究室に遊びに行ったのが、XROBOCONの募集締め切りの3日ほど前だったので、怒涛でメンバーを集めに集めて、勢いでエントリーしました。
――――恩師の後押しがなければ、XROBOCONには参加していなかったんですね
そうですね。僕も高専時代にロボット作りの一応の勉強はしましたけど、専門はソフトウェアです。学生時代は高専ロボコンではなく、DCON(ディープラーニングコンテスト)に出場していたくらいですので。なので、一人では万博に出せるようなロボットなんて絶対に作れないし、先生に言われなければXROBOCONには応募していなかったです。
でも、いざチームを組んでみると、メンバーには僕とは専門が違う高専ロボコンのレジェンドや、学生ロボコンで優勝経験のある凄腕の人たちがいて。こんな有名な人たちとコラボできるなんて、僕からしたらもうビックリですよね!
ロボコンのダイナミックさはそのままに、複合現実の世界を見せます
――――荒木さんのチームはどんなロボットを作ろうとしていますか?
うちのチームは演出が特徴的でして、メタクエストを使おうと思っています。
詳しくはまだ言えないんですが、このメタクエストで僕ら出場選手が見ている世界を映し出しつつ、そこにキャラクターがいるという設定にするつもりです。つまり、メタクエストを使った、バーチャル空間とリアル空間を結び付けた演出です。

――――なぜメタクエストなんですか?
これは僕の提案でした。僕は旭川高専時代に同級生がNHKの高専ロボコンに出場しているのをテレビでよく見ていたんですが、ずっと気になっていたことがありました。ロボットは動いているけど、操縦者が一体なにをしているのか分からないんですよね。もちろんロボットの動きも面白いですが、僕は操縦者の手元が見たいって思っていたんです。一番面白い部分がブラックボックスになってしまっているような気がしてモヤモヤしていたんです。
だからXROBOCONに出ると決まった時から、何かしらの方法で操縦画面を面白く可視化したいと思っていました。
もう1つ、僕の専門はソフトウェア工学でして、以前に消火栓の位置を可視化するアプリを作った経験もありまして、AR(拡張現実)のノウハウもあったので。ロボットを動かすにも3D表示をさせたいなと思ってメタクエストをゴリ押ししました(笑)。
実は、メタクエストをロボット操作に使うこと自体が珍しいことなんですよ。ネットにも情報が転がっていないくらい珍しい。そのぶん、うまくいく保証はありませんが、でもせっかく万博会場でやるんだから、チャレンジはしたいですよね。
―――高専ロボコンや学生ロボコンのレジェンドたちとは、どんなふうに協同作業を進めているんですか?
違う分野の人と話すのは、大変な時もありますがすごく楽しいです。
ロボットのレジェンドたちは、もう専門用語ペラペラなんですよ。「このエンジンの出力が足りないから、うんたらかんたらしよう」とか「これシュミレーションかけてきて」みたいな会話がすごいスピードで飛び交っています。AIやLLMの制御をしている人たちもいて、その人たちはまた違う視点を持っています。僕はキャラクターをどうやってリアルタイムに過不足なくしゃべらせるとか“表現”に近い部分を担当しています。みんなで、お互いのデータをうまく繋げる仕組みがあったら面白いよねとか言いながらやっています。自分の知識や領域だけ何とかしようとしない、お互いに「ええ!?そうなんですか」「確かに、こういう使い方もできるんですね」とか言いながら。こんなことは今まで体験したことがないですよね。
―――どんなロボットになるのか、楽しみです
ロボットの詳細は秘密なんですが、けっこうダイナミックな動きをする予定なんですよ。XROBOCONのフィールドには段差があるんですが、、、階段をロボットがのぼるというと、普通はキャタピラ型ロボットみたいなのを想像しますよね。でも、うちは派手にジャンプする予定なんです。僕ら情報系の人間だけでは、決して動かせないスケール感ですよね。ですので、ロボコンのダイナミックさはそのままに、複合現実の世界をお見せできると思いますので、楽しみにしていてください。


何でもAIがやる時代だからこそ、人間力が問われる
――――XROBOCONは20年後の未来を掲げていますが、20年後はどんな世の中になっていると思いますか?
最近は何でもChat GPTに聞いたらポンと一瞬で答えが出てくるようになりましたよね。とはいえ、まだまだ明らかに間違っている嘘の答えも出てきます。でも、ここから先はどんどん精度が上がって、Chat GPTは絶妙な選択肢をいくつも提示してくるようになっていきます。でも、そのもっともらしい選択肢からどれを選ぶか最終決定をするのは自分たち人間なんですよ。情報の取捨選択というか、選び取る力というか。選んだ選択肢に対しては、誰も責任を取ってくれない。本人が責任を負うしかないんです。
――――選び取る力はどうやって身につければいいと思いますか?
直観力でしょうね(笑)だって、もっともらしい選択肢が並んでいるんですから。でも、僕は人間力やその人の経験値が大きいと思っています。
僕が高専生の頃は、まだWikipediaの時代だったので、レポートを書く際にも先生からWikiからそのまま情報を引っ張ってくるのはダメ、ちゃんと信用できるサイトや教科書に書いていることでウラを取りなさいと言われてきました。自分で調べる力をつけなさいとよく言われました。その経験は大きいと思っています。
ものづくりに厚みが出る
――――今回のXROBOCONは第1回目の開催ということもあり、興味はあるけど参加を躊躇した人もいるかと思います。もし第2回が開催されたら、参加をオススメしますか?
自分も恩師との雑談がなければ参加していなかったように、例えばユニティだけとかバーチャルの世界でやってる人だけでチームを組んでXROBOCONに参加しましょうという気持ちはなかなか起きないと思います。概要を見て面白そうだなと思っても、スキップする人がいる多いかもしれないですけど、逆にそういう人たちこそ積極的にやってみたら面白いのかなと思いますね。
本当に全然違う人たちとコラボできる機会ですし、ものづくりに厚みが出るような気がしています。
――――ありがとうございました。本番を楽しみにしています。
メタクエストを使っての演出は、ちゃんと動くかどうか心配ですが(笑)
せっかくの万博なので、おもしろチャンレジとして頑張ります!
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